骨盤臓器脱、性器脱
日本では以外に知られていないようですが、経産婦の3人に1人が潜在疾患をもつとも言われている、臓器脱(骨盤臓器脱)、子宮脱について、その原因と対処法について紹介します。
5,000年以上昔からあった骨盤臓器脱(性器脱)
骨盤臓器脱(性器脱)・・骨盤底部が開いたままの状態で腹圧が上がるなどした場合に、骨盤内部に納まっている臓器が、女性器から脱出してしまう疾患。 次にあげる子宮脱もこの骨盤臓器脱(性器脱)の一つの症状。 症例や治療の記録は古く、5,000年ほど前のエジプトの壁画に残されていたり、ヨーロッパを始め歴史上、身分が高い女性ほど骨盤臓器脱になる割合が高かったとする記録があります。 キッカケの多くは出産による場合が多く、骨盤底筋群(インナーマッスル)が緩み骨盤が開いたままの状態であることが主な原因です。 また体形補正下着やコルセットなどを使用し続けると腰回りの筋力が低下し、特に骨盤底筋群の発達が妨げられる傾向にあります。 こうした筋力が衰えると体形が崩れるため、一般に補正下着などへの需要が高まる傾向にあり、こうした衣類の着用が腹圧上昇につながり、下垂した骨盤内の臓器が女性器より脱出してしまう結果になります。 こうした骨盤臓器脱は年々広まる傾向にあります。
- 子宮脱・・骨盤臓器脱の中でも、最も脱出しやすいのが子宮で、江戸時代から昭和にかけては「なすびさん」と呼ばれることもあり、さほど珍しい疾患ではありませんでした。 ところが当事よりも潜在的患者数は増えているのにも関わらず一般にあまり聞かれなくなったのは、なかなか相談し難い疾患であること、誰に相談していいかわからず一人で問題を抱え込んでしまう傾向が強まったからとも言われています。 本来骨盤の内側にあるべき子宮や膣と共に外に飛び出してしまうので、粘膜は乾燥し感染症を起こしやすくなります。 子宮脱は痛みが伴わないため、初期の段階では自覚症状のない女性が多いのも特徴です。
- 対処法・・古くから治療実績のある疾患にも関わらず、その対処法は近年まで酷いものでした。 近代まで、木製や皮製の棒状の器具を膣から挿入し、臓器(子宮)を押し込み、単にそれを固定する対処方法が取られていました。 近年になりそれが清潔を保つ目的から樹脂製やゴム製に変わり、またリングペッサリーによって膣内を広げ、臓器の脱出を防ぐ方法が取られるようになりました。 しかし患者さんによっては依然として違和感が強く屈辱的な治療方法であり、それらも疾患の認知度を下げた理由かも知れません。 ここ数年は「フェミクッション」という専用の治療具が登場し、清潔で快適に治療を行えるようになりました。 「フェミクッション」は日本人により発明され、その清潔さ治療時の快適さで高く評価されています。 根治するには、腹横筋や骨盤底筋群といったインナーマッスルの回復が必須となり、それが難しい場合は外科手術になります。 若年の場合は筋力回復、高齢の場合は外科手術というのが通例の選択肢となっています。 外科手術においてはメスを使わず開腹もしない手術が開発されていて、経過次第で日帰りできるほどに進歩しています。 この手術を開発したのも日本人です。 骨盤臓器脱、子宮脱の治療においては世界の最先端を行く日本ですが、その認知度は依然として低いため、相談先を見つけるのが難しいかも知れません。 その場合には「女性医療研究所」へ相談される事をおすすめします。
- 予防法・・骨盤臓器脱、性器脱の予防については筋力、特に骨盤回りのインナーマッスルの衰えを防ぐしかありません。 主に「腹横筋」「骨盤底筋群」「大腰筋」などをトレーニングする事で、臓器が下垂する事を防ぎ、性器脱への進行も防ぐ事ができます。 日常の注意としては、腰回りや腹部を強く圧迫する衣類の着用をできるだけ避けること、時々インナーマッスルを鍛える事ができるストレッチなどを取り入れてみてはいかがでしょうか。